「手の指の関節が痛い」、それはメノポハンドと呼ばれる更年期症状かもしれません
50歳前後に起こる手の指の関節が、腫れている、ズキズキと痛い、関節の横にイボのような膨らみがある、曲がってきた・・は意外かもしれませんが更年期症状のひとつです。
ばね指、ドケルバン症候群、ヘパーデン結節、ブッシャール結節、拇指CM関節症、主根菅症候群などの診断がついた方もたくさんいます。
しかし、整形外科を受診しても、今までは「歳のせい」「指の使い過ぎ」「我慢するしかない」「あきらめなさい」と言われ、我慢を強いられてきた辛い症状でした。
女性の健康を支援するハイジアの助産師佐藤みはるです。
痛みがあると、キーボードを打てなくて仕事ができない、包丁が握れず料理が苦痛、雑巾が絞れず掃除ができない、指の曲がった手を人前に出したくなくて仕事を辞めたい
じつはこれらは、私が手指の痛みなどに関して相談を受けたり、座談会で聞いた更年期女性の切実な声です。
近年、ようやくこの症状は女性ホルモンが減少することで起きる症状で、最近予防法も対処法も治療法もわかってきました。
もう、我慢しなくてもいいのです。
ただし、リウマチなどが原因ということもありますので、症状が続くようでしたら医師へ相談してください。
私が、講演や講座で、「指が痛い」「指の関節が赤く腫れている」「指が曲がってきた」「指がしびれる」「指がこわばる」これらは更年期症状のひとつです、というお話をすると、「私も痛いです」「私も指が曲がっています」「うちの母が痛がっていました」「リウマチかと思っていました」という人が非常に多いのです。
そして、病院に行っても「治療はない」「手術をする」と言われ絶望しましたと話されます。
大学生に講義をすると「お母さんが今指を痛がっている」と感想を寄せてくれる学生さんたちもたくさんいます。
あまりの反響に私自身が驚いたくらいです。
指の関節が痛いのと更年期は、なかなか結び付きませんよね。
なぜ、更年期になると指が痛くなるのでしょうか?
更年期に多い手指の痛みと変形、その原因は女性ホルモンの減少
2018年に四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンターの平瀬雄一先生が、女性の指の病気は更年期以降に多く、エストロゲンの減少が原因ではないかと考えホルモン補充療法やエクオールサプリメントを試したところ改善されたというお話をしてくれました。
先生のお話の概略は次のようなことです。
「変形性疾患のことで整形外科を受診するのは、90%が女性、その女性の90%が更年期の女性です。」
「指の痛みで受診した女性に更年期の症状ありましたか?の問いにほとんどの人が、私には更年期症状はありませんでした・・と答えます。」
「手の痛みや関節痛を更年期症状とは知らず、ホットフラッシュはないから更年期ではないと思って婦人科を受診せず、更年期の治療や対処を受けずにいてしまうのだそうです。」
更年期には、エストロゲンが急激に減少しますが、他にも減少する時期があります。
それは、一つは「産後」ですね、私が病院で働いていた時、産後のスタッフが指が痛いといっていたことが何度かありました。
妊娠中は胎盤から大量に出ていたエストロゲンが、お産で胎盤がでてしまうと、急激に減少してしまいます。
妊娠中は、卵巣はお休みしていますので、産後すぐに卵巣の働きが復帰してエストロゲンを分泌してくれるわけではないので、更年期女性と同じようにエストロゲンが枯渇している状態になります。
なので、産後に手指が痛いの他にも、うつ症状が出たり、イライラしたり更年期症状と同じような症状が出現することがあります。
他にも、ストレスフルな状態になるとエストロゲンが作られないし、ダイエットや病気で急激に体重が減少したときも卵巣の機能が落ちてエストロゲンが作られなくなります。
平瀬先生は、こう話されていました。
「使いすぎならば、利き手に起きるのに、利き手ではないのに痛いのはなぜか?歳のせいというけれど、80歳過ぎから指が曲がる人はいない」
腱鞘炎などは、授乳期や更年期のエストロゲンが減少しているときが多い
とても印象的だったのは、『(医師が)「使いすぎ」「歳のせい」「治らない」と、その不用意な発言が患者に思考停止をさせ、新たな関節変形の発症に加担している』と話されていたことです。
医師の一言が、更年期以降の女性の人生を変えてしまう・・と相談を受けていて時々私も思うことです。
もう一つの指が痛い原因ーエクオールを作ることができない
本当に指が痛くてもどうすることもできずに苦しんできた女性が、いままでにどれだけたくさんいたのだろうと思うと胸が痛みます。
そして、どうして更年期に手の病気に罹ってしまうのか?平瀬先生が話されていたのが、「エクオールを産生できないから」だそうです。
エクオールは、エストロゲンに似た働きをしてくれる成分です。
エクオールについての詳細:
エストロゲンが減少しても、このエクオールを自分で作れる人は、「指が痛い」という症状が出にくいそうです。
そこで、平瀬先生が行った研究ではエクオールのサプリメントを飲むと、変形が進んでしまう前なら、効果があることがわかったそうです。
更年期に知っておきたい手指の痛みを和らげる方法ーエクオールの効果
ここまで読んで、「私も」と思った方が多いかもしれません。
まずは、エクオールのサプリメントを飲んでみることをお薦めします。
手指の不調のある119名に、エクオール10㎎3ヶ月摂取したところ6割の人が指の機能・痛みが改善していた。
ただし、現在エクオールのサプリメントは非常に多く販売されていて、中には改善が期待されるのに必要な量が入っていないものや、全く入っていないのに商品名にエクオールや類似した言葉をつけている場合があります。
どのようにエクオールのサプリメントを選べばよいか、こちらに詳しく書いていますので、ご参照ください。
それから、サプリメントや漢方薬というのは、急激に効くものではなく、徐々に作用するものですから、最低でも3ヶ月は様子をみてくださいね。
更年期の手指の痛みを和らげる方法ーセルフケア
1.温めましょう!
エストロゲンもエクオールも血液中に入って、各々の細胞に送られます。
指は、身体の中で先端部分で血液が届きにくく、露出して外気に触れている部分なので、冷えやすい部位です。
冷えていると血液は十分回ってきませんから、指の関節に働くエストロゲンやエクオールが隅々まで回らなくなってしまいます。
また更年期では特に自律神経がアンバランスになり交感神経が優位になると血管は収縮しやすく余計、血液が届かなくなってしまうのですね。
①手袋をつける (寝ている時だけでも)
暑い時のエアコンが効きすぎ‥の中で仕事をしているときは、長そでにするとか、指先が出せる手袋をするなど工夫の余地があります。
②シャワーで済ませずゆっくりお風呂に入り、身体全体を温める
手浴もいいですね、好きなアロマオイルをいれると、リラックスもできます。
③リラックスする (副交感神経を優位にする)
自分がリラックスできることを見つけておきましょう。
2.冷やしましょう!
温めると真逆ですが、指を使い過ぎて痛い、赤く腫れているなどような場合は、冷やします。
このようなときは指の関節で炎症がおきているので、炎症を抑えるのに冷やします。
と、いっても氷でガンガン冷やすのではなく流水で冷やす程度でもいいようです。
3.テーピング・装具
痛みがひどい時や、炎症が起きている時(関節が赤くなって腫れているとき)には、指を動かさず、安静にすることで痛みを軽減したり、炎症を抑えることができます。
動かさないようにテーピングや装具を使う方法もあります。
わかりやすい動画がありましたので、参考にしてください。
紹介されていたテープ・装具類の購入方法です。
見ているといろいろなテープがあり楽天やアマゾンなどネット購入できるものもたくさんあります。いろいろと試して自分に合ったテープを探すといいですね。
3M コーバン自着性弾力包帯 https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/p/dc/v000482516/
ヘパーデンリング https://www.nousaku.co.jp/medical/heberden-ring/
ヘバループ https://www.muranaka.co.jp/online/products/detail.php?product_id=94416
竹虎 ワーデル http://www.taketora-web.com/medical/%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%AB-2/
キネシオテープ https://www.kinesiotaping.jp/kinesio_tex/
アクティームブライゾフォルテhttps://store.shopping.yahoo.co.jp/wel-sense-shop/10005543.html
CMシリコーン http://www.nakamura-brace.co.jp/product/upper/cm-silicone.html
100円ショップにも似たようなのがありましたので、試してみるにはいいかもしれません。
更年期の手指の痛みの治療方法ーホルモン補充療法
さて、サプリメントを飲んだけれども、あまりよくならないという方の次のステップは、ホルモン補充療法です。
ただ、残念ながら産婦人科の先生たちや整形外科の先生が、皆、このことを知っているかというとそうではない可能性があります。
まだまだ日本は、更年期の医学は後進国
整形外科を受診したら「婦人科に行ってみてください」と言われたので婦人科を受診したのに「更年期症状ではないから別な整形外科を受診しなさい」と言われた・・などと聞いたこともあります。
日本産婦人科医会のHPではホルモン補充療法を勧めています。
https://www.jaog.or.jp/qa/menopause/jyosei200527/
日本女性医学学会のHPにも載っています。
https://www.jmwh.jp/n-yokuaru17-kansetu.html
こちらの記事を「調べたら、このように書かれていたのですが・・」と言ってお見せするのも良いでしょう。
できれば、更年期の専門医を探すことをお勧めしています。
日本女性医学学会のHPで、住んでいる地域の専門医を探して見てください。
どの病院・クリニックを選ぶか迷ったら参考にしてください
婦人科病院・クリニックの選び方と受診時のポイント
また、手の痛みの他にも症状があれば、全部言いましょう。
(治療ができない場合もありますが。)
手の痛みや更年期の症状でどのくらい辛くて、日常生活や仕事をするうえでどのくらい困っているか、具体的に伝えましょう。
ホルモン補充療法に不安を抱く女性も多いのですが、それはホルモン補充療法のことを詳しく知らなくて不安が募るということもあります。
ホルモン補充療法に関して不安な方は、こちらの記事を参考にしてみてくださいね。
更年期の手指の痛みの治療方法ー手術
どうやっても、痛く変形してきたという時は、整形外科の手外科専門の先生を受診してみてください。
もうすでに指が曲がっているという方は、整形外科の手外科で手術という方法があります。
平瀬先生がおしゃっていたのは、「手外科専門の医師にもそれぞれ専門があって、中には、「歳のせい」「使いすぎ」という医師がいるかもしれない、その時は専門外なんだと判断して別な医師を受診してください」と言っていました。
詳しくは、こちらのサイトをご覧ください。
ただし、何もしていないと指の変形は他の指も起こってしまうことがありますから、エクオールのサプリメントやホルモン補充療法も一緒に行った方がいいと思います。
私の体験談
私は閉経後1年ほどでホルモン補充療法を開始したので、指の痛みを感じたことはありませんでした。
しかし、途中でホルモン補充療法をお休みにしたときに、この症状がでてきました。
エクオールのサプリメントは、飲んでいたのでエクオールのサプリメントでは、指の痛みを抑えられなかったことになります。
ホルモン補充療法を再開しましたら、指の痛みは取れました。
整形外科の先生の中には、エクオールのサプリメントで効果がない時は、手術を勧めることもあるようですが、手術の前にホルモン補充療法を試すのも選択肢のひとつです。
手指の痛みを予防する方法
常々、更年期女性のお話を聞いて思うことは、更年期のことを知っているかどうかで、更年期以降のQOLに差がでるということです。
今回の指の痛みに関しても知っていれば、予防もできますし、対処もできますし、適切な時期にホルモン補充療法を受けることができます。
ぜひ、更年期のことを早くから知ってほしいものです。30歳代になったらすぐ、勉強してほしいですね。
産後指が痛かった、お母様の指が曲がっているという方は、予防的に早くから対処を行った方が良いでしょう。
大豆製品を積極的に摂るといいと思います。
ただし、エクオールを産生できる腸内細菌を持っていないといくら大豆製品を食べても自力でエクオールを産生できません。
まず、自分がエクオールの産生菌をもっているかを調べてみましょう。
もし、産生菌を持っていれば大豆製品を多く摂ることで、自力でエクオールを産生し、指の痛みを防いでくれる可能性があります。
また、手を暖かくして、血液の循環をよくしておくということも大事なことです。
もし、エクオールの産生菌がなくて、自分の母親や家族歴(祖母、叔母、姉妹)として指の変形がある場合、産後指が痛かった方は、予防的に40歳すぎたら、エクオールのサプリメントを始めるのがいいでしょう。
エクオールサプリメントは基本的に何歳までも飲むことができます。
(納豆や豆腐を食べるのに年齢制限がないのと同じ)
心の持ち方
身体のどこかが痛いのは、日常生活に何らかの形で支障をきたします。
でも我慢して我慢できなくもない手指の痛みは、そのまま何もしないで過ごす人も多く、親から「昔からある症状だから我慢しなさい」と言われてしまうことあります。
私が相談や講座をしていると、この症状を抱えている女性は本当に多くて「みんなで渡れば怖くない」じゃないけれど「みんなそうなんだから仕方がない」とあきらめている人も多いことに驚かされます。
放っておくとやがて指が変形して、皮肉なことに指の痛みは治まります。
痛みは治まっても、瓶の蓋が回せない、うまく動かせず家事ができない、編み物の針が持てない、縫物ができないなど生活の支障は続くどころか影響が大きくなってしまいます。
ぜひこの記事を読んで対策をとってみてください。
せっかく医学が進歩して、わかってきたことですから、辛い思いをするよりも恩恵にさずかりましょうよ!
*以前書いたコラムをリライトして最新情報にしています。
指の痛みに関してハイジアでは個別にご相談をお受けすることもできます。