
母親の更年期症状は、子どもの心にも影響する
―「我慢しない選択」が、子どもを守ることにつながる―
今までの私の活動の中で、相談を受けた方、学生さんなどから「子どもと取っ組み合いの喧嘩になった」「母に口答えをしたらお皿が飛んできた」「包丁を向けられたことがある」といった話を耳にすることがあります。
似たような話をSNSなどでも見かけます。
語られる側も、語る側も、決して“特別な家庭”の話ではありません。
そして、これらの背景に母親の更年期症状が関係している可能性は、決して小さくないと感じていました。
今回このことを研究した論文が出ましたのでご紹介します。
子どもは「理由がわからない」まま傷つく
私の講座を受けた方からは、後から「母もつらかったんだ」「更年期だったのかもしれない」と理解できるけれど、当時は辛かったとも聞きます。
そうなんです、子どもには理由がわかりません。
突然怒鳴られる、否定される、暴力的な言動を向けられる――
それは「自分が悪いからだ」「自分のことが嫌いになったんだ」「愛されていない」と受け取られやすく、心の深いところに残ります。
トラウマや自己否定感、対人不安につながることは、十分に考えられます。
研究で示された「母の更年期」と「子のメンタルヘルス」
2026年1月に国立成育医療研究センターが発表した研究では、全国から無作為に抽出した10〜16歳の子を持つ1,541世帯を対象に、母親の更年期症状と子どものメンタルヘルスとの関連が調べられました。
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「更年期症状のある母親の過程では子どものメンタルが悪化」
母親の更年期症状は5段階に分類され、
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軽症もしくは無症状:32%
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軽症〜中等度:41%
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中等度:17%
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中等度〜重度:8%
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重度:2%
とされました。
医学的に受診が望ましい「中等度以上」であるにもかかわらず、実際に受診していた人はわずか9%にとどまっていました。
さらに子どものメンタルヘルスをみると、母親が軽症もしくは無症状の場合を基準にしたとき、
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母が重度の場合
ネット依存傾向:6.38倍
抑うつ:3.9倍 -
中等度〜重度の場合
ネット依存傾向:2.12倍
抑うつ:1.23倍
と、有意にリスクが高まっていました。
抑うつだけでなく、問題行動、不注意、情緒不安定、不安なども、母親の症状が重いほど多くなる傾向が示されています。
「我慢する母」ではなく、「対処する大人」を見せてほしい
更年期症状を感じたとき、「子どもがいるから」「母親だから」と我慢を重ねてしまう方は少なくありません。
けれど、我慢することが、必ずしも子どものためになるわけではありません。
むしろ、
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つらいときは相談する
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医療の力を借りる
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自分の状態を言葉で伝える
そうした姿を見せることは、子どもにとって「大人になること」「困ったときの対処」を学ぶ大切な機会になります。
他の文化もそうですが、子どもが更年期になった時に困らないように親から子どもへ伝えることも重要です。
更年期は「家庭で学べる健康教育」でもある
私は、小学校高学年くらいから男の子にも女の子にも、そして母親だけでなく父親にも、更年期についての健康教育が行われていいのではないかと考えています。
生理と同じように、更年期も「誰にでも起こりうる体の変化」です。
それを知っているだけで、家庭の空気は大きく変わります。
女性のためだけではない、更年期ケア
研究チームは「更年期症状への早期対応や相談支援体制の構築は、女性だけでなく子どものためにもなる」と述べています。
全く同感です。
更年期ケアは、女性個人の問題ではなく、家族全体、社会の健康を守るケアです。
母親が自分の体と心を大切にすることは、そのまま、子どもの未来を守ることにつながっていきます。
今後、そのような講座も開催していきたいと考えています。
