
妊娠・産後の体の状態は、20年後の更年期につながっている
― 助産師として、妊娠中・産後の女性に今いちばん伝えたいこと ―
はじめに
妊娠・出産は、人生の中でも大きな出来事です。
多くの女性が「無事に産むこと」「産後を乗り切ること」に全力を尽くします。
けれど、助産師として長年女性の体を見てきて、そして更年期支援に関わるようになって、強く感じていることがあります。
それは妊娠・産後の体の状態は、その時だけの問題ではないということです。
20年後、更年期の体調に確実につながっています。
この視点は、まだほとんど知られていません。
だからこそ助産師として更年期に関わるものとして、妊娠中・産後の方に伝えたいのです。
「今の健康」が「未来の健康」につながるという事実
女性の体は、
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思春期
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妊娠・出産
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更年期
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高齢期
と、ホルモンの大きな変化を繰り返しながら生きています。
特に妊娠・出産と更年期は、どちらも「エストロゲンが大きく変動する時期」です。
妊娠中はエストロゲンが通常の100倍と非常に高くなり、出産と同時に急激に低下しほぼゼロになります。
この産後の状態は、医学的に見ると更年期と非常によく似たホルモン環境です。
つまり産後は、一時的に「更年期と同じ条件」を体験している時期なのです。
産後に起こることは、更年期に再び現れることがある
産後に、こんな経験はありませんか?
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気分が落ち込む、涙が出やすい
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イライラする
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手指や関節が痛い
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尿もれが気になる
これらは産後に一度出現し消失するのですが、更年期に再び現れることが少なくありません。
実際に、
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産後うつ → 更年期のうつ症状
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産後の手指の痛み → 更年期症状として再燃
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産後の尿もれ → 更年期で悪化
という流れは、臨床の現場でよく見られます。
これは偶然ではありません。
エストロゲンが減少した時に出やすい症状として、更年期に再び表に出てくるのです。
月経再開が意味する「本当の意味」
よく「産後2ヶ月しか経っていないのに生理が来た、最悪~」とか「生理ない方が楽だししばらく次の子はいいからなるべく遅く来てほしい」という声をきくことがあります。
しかし産後の月経再開は、単に「妊娠できるかどうか」ではありません。
月経が再開するということは、
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エストロゲンが再び分泌され始めた
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骨・血管・関節・脳が守られ始めた
という健康回復の重要なサインです。
一方で、
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産後1年以上たっても月経が再開しない
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授乳を終えてから3か月以上たっても再開しない
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一度再開したのに、3か月以上来ない
この場合、エストロゲンが少ない状態が長く続いている可能性があります。
これは、
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次の妊娠への影響
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骨密度の低下
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関節痛
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更年期症状の土台
につながります。
産後1年以上月経が再開しない場合や、断乳後3か月以上再開しない場合は、エストロゲンが低い状態が長く続いている可能性がありますので、婦人科を受診しましょう。
月経が再開しない方が楽な反面、体への影響は思った以上に大きいのです。
妊娠合併症は「その時だけ」の問題ではない
妊娠中のトラブルも、未来の健康に影響します。
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妊娠高血圧症候群 → 将来の高血圧・心血管疾患
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妊娠糖尿病 → 2型糖尿病
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低出生体重児の出産 → 母の心血管疾患リスク
また、
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子宮内膜症
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子宮筋腫
といった成熟期の疾患も、更年期以降の健康に影響を及ぼします。
更年期以降に多い病気は、突然起こるわけではない
65歳以上で介護が必要になる主な理由には、
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脳血管疾患
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認知症
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骨折・転倒
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関節疾患
があります。
これらの多くは、更年期以降のエストロゲン低下と生活習慣の積み重ねによって起こります。
つまり、
妊娠・産後
更年期
高齢期
は、すべて一本の線でつながっています。
今から未来の病気を予防するためにできること
妊娠中・産後だからこそ、意識してほしいことがあります。
産後の受診の目安
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月経異常があるときは受診
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産後1年以上月経が再開しない場合
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断乳後3か月以上再開しない場合
日常でできるケア
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ストレス管理・睡眠
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冷やさない
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ストレッチ
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大豆製品・必要に応じたサプリメント
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骨盤底筋トレーニング
将来を見据えた健康管理
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健康診断・定期受診・がん検診
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家庭での血圧測定
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体重管理
適切な時期に、適切な対処をすることこれが未来の病気を防ぐ力になります。
助産師として、妊娠中・産後の方へ伝えたいこと
妊娠・出産はゴールではありません。
未来の健康への通過点です。
「今はまだ若いから」「産後だから仕方ない」そうやって体の声を後回しにしないでください。
今の体を大切にすることは、10年後、20年後の健康を守ることです。
Q&A
Q1. 妊娠・産後の体調が、更年期と関係するのは本当ですか?
はい、関係があります。
妊娠・出産と更年期は、どちらも女性ホルモン(エストロゲン)が大きく変動する時期です。
産後は一時的にエストロゲンが大きく低下し、更年期と似たホルモン環境になります。
この時期の回復状態が、その後のホルモン変動への耐性に影響し、20年後の更年期症状に関係することがあります。
Q2. なぜ産後は「一時的な更年期状態」と言われるのですか?
出産と同時に胎盤が排出されることで、エストロゲンが急激に低下します。
これは更年期に起こるホルモン低下と非常によく似た状態です。
そのため、産後にほてり・気分の落ち込み・不眠・関節痛など、更年期と似た症状が出ることがあります。
Q3. 産後に出た症状が、更年期にまた出ることはありますか?
あります。
臨床では、産後に経験した症状が、更年期に再び現れるケースを多く見ます。
例として、産後うつが更年期のうつ症状として再燃したり、産後の手指の痛みや尿もれが更年期に悪化することがあります。
Q4. 産後の月経再開は、なぜ重要なのですか?
月経再開は、妊娠が可能かどうかだけでなく、
エストロゲンが再び分泌され、骨・血管・脳・関節を守り始めたサインでもあります。
産後1年以上月経が再開しない場合や、断乳後3か月以上再開しない場合は、エストロゲンが低い状態が長く続いている可能性があります。
Q5. 妊娠中のトラブルは、将来の健康にも影響しますか?
はい、影響することがあります。
妊娠高血圧症候群は将来の高血圧や心血管疾患、妊娠糖尿病は2型糖尿病のリスクと関連しています。
妊娠中の体の変化は、その時期だけの問題ではなく、将来の健康とつながっています。
Q6. 今からできる、更年期に向けた準備はありますか?
あります。
妊娠中・産後の時期から、
・十分な睡眠
・ストレス管理
・冷え対策
・骨盤底筋トレーニング
・定期的な健康診断
を意識することが、更年期症状の軽減や健康寿命の延伸につながります。
まとめ
妊娠・産後の体の状態は、確実に未来の更年期、そして高齢期の健康につながっています。
だからこそ、
今、知ってほしい。
今、整えてほしい。
助産師として、心からそう願っています。

