なぜヒトは更年期以降も生きていることができるのか?
ほとんどの生物が、生殖機能がなくなった時に、命も尽きるのに、なぜヒトは更年期以降も生きていることができるのでしょうか?
それは、人類を絶やさないよう進化した結果なのです (仮説ではありますが)
だから、更年期を迎えるのは、老化ではなく進化なんです。
私たちは、更年期以降も役割があるということを自覚していきたいと思います。
生物は生殖機能がなくなった時が命尽きる時
ほとんどの生物は、生殖機能がなくなった時が、寿命になります。
たとえば
カマキリのオスは、交尾中にタンパク源として、メスに食べられるそうです・・
(うまく逃げるオスもいるそうですが)
産卵のため川を遡上してきた鮭は、「ホッチャレ」と呼ばれ、産卵すると寿命が尽きます
(ホッチャレになった鮭は産卵に栄養をとられているので、食べてもおいしくない)
生殖機能がなくなっても、生きていられる生物はごくわずかしかいません
生殖機能がなくなる、閉経後も生きていられる生物は
ヒト
それから、一部くじら、シャチ、象に認められるくらいだそうです。
それは、なぜか??
その答えに、「おばあちゃん仮説」があります。
私たちが、健康に生活できるのは私たちの祖先が、生活環境に合わせて、非常に巧妙に進化を続けてきた結果
この「おばあちゃん仮説」を知った時もつい、進化の選択に唸ってしまいました。
実は進化の過程で、女性は、ある一定の年齢で自分の生殖を切り上げて娘の子育てを手伝うようになったというのです。
そのほうが、子どもの生存率が上がるからだそうですよ!
子どもをたくさん産んだ方が、子孫を残すことに貢献しそうですが、私たちの祖先は、それを選択しませんでした。
それは、高齢出産では、いろいろな合併症がおきて子も自分も死亡率が高くなるからと思われます。
(長年助産師をしてきて、実感するところです)
確かに子どもの安全という観点からも、この選択は正しかったのかもしれないと思います。
子どもが小さい時は捕食者に狙われやすくなります。
目を離したすきに、子どもが危ない行動をとり、事故に会う機会も増えます。
私も男の子2人育てました。
一時も目を離さないつもりでしたが子どもが静かだったりすると、ふと意識が離れます。
そのときが危険
子どもも何か夢中になっていると静か・・になります。
「あ!静かだ!」と思って目をやるといたずらに夢中になっていることが多々ありました。
子どもに向ける目が多いほどそのような、隙がなくなり、子ども危険も回避されたのでしょう。
自分の子育てをとおして、知恵も蓄積されていたでしょうからそれを直接、娘に伝えるというのも、結果的に子どもが生き残ることにつながったのではないかと考えます。
更年期以降も生きていられるのは、人類の進化のおかげです。
おばあちゃんがいるほうが孫の生存率が高い
最近の調査では実際におばあちゃんがいるほうが孫の生存率が高いという結果がでています。
おばあちゃんがいたほうが、孫の栄養状態が良好だそうです。
シャチもおばあちゃんと一緒に子育てをしたほうが、孫シャチの死亡率が低くなるということが観察されています。
象でも、おばあさんがそばにいたほうが、娘象の出産間隔が短くなることが観察されています。
現代のおばあちゃんは?
ここまで、なるほどな~と思いませんか?
しかし
現代は核家族化や、おばあちゃんにも仕事や介護があったり、或いは高齢出産になるとおばあちゃんも高齢で、なかなか娘の子育てを手伝うことができなくなりました。
私も二人目は、親が高齢になって手伝ってもらえず、「食べるものがないな・・」という時もありました。
里帰り分娩も、少なくなってきました (今の里帰りは、都会だと分娩予約ができないので、地方の地元で産むという事情があります)
病院で働いているときには、産後の生活を確認すると、手伝ってくれるのは夫だけ・・ということが多かったですね。
病院にお見舞いに来てくれたおばあちゃんたちに、「子育て手伝ってあげてくださいね」と声をかけると、「いやいや、昔の子育てとは最近違ってきてるから、手出しはしないわ~」というおばあちゃんも多かったですね。
昔とは様相が違います。
現代風おばあちゃん仮説
このおばあちゃん説仮話をすると、そもそも私は子どもがいないし、孫もいない‥私の存在価値は?という方もいます。
私も、孫はいません。
でも、思います。
直接孫の子育てをしていなくても、働いて税金納めたり、ボランティア活動をしたりして社会に貢献していれば、それは間接的に子育てを手伝っていることと同じだと思うのです。
これが現代風おばあちゃん仮説!
そして、だからこそ男性の子育て参加が、今以上に必要なんですよね。
参考:
山岸 昌一 「おばあちゃん仮説」
これからの女性医療をかんがえる White 2017 Vol5 No2
長谷川 眞理子「女性の寿命ー閉経後も長く生きるわけ」
これからの女性医療をかんがえる White 2017 Vol5 No2