HRT コラム ホルモン補充療法 更年期障害

ホルモン補充療法がわかる初心者向けガイド

2020年7月15日

 

最近、だいぶ身近になってきたホルモン補充療法です。

 

でも・・

 

「更年期症状が辛く受診したらホルモン補充療法を勧められたけど、なんか不安」

 

「ホルモン補充療法は自然に反していると思う気持ちもあって決心できない」

 

「症状は辛いがホルモン補充療法は乳がんになると聞いたことがあるので、怖い」

「いろいろな情報がありすぎて、かえってわからない」

「周りにホルモン補充療法をしている人がいなくて話が聞けない」

 

こんな思いで、この記事を読んでくれようとしているのではないでしょうか?

 

婦人科を受診しても、医師もそれほど詳しく説明する時間もありませんので、聞きたいことを聞けず疑問を持ったまま始めて結局途中でやめてしまったり、周りに止められたり、不安を感じたまま続けてるいる方も少なくはありません。

よくわからないまま途中でやめて後から後悔したり、不安なまま治療を続けて効果が実感できなかったり、相談や講座でお話を聞いているとそのような方がたくさんいます。

 

女性の健康を支援するハイジアの助産師佐藤みはるです。

 

ここでは、そのような方に、ホルモン補充療法について悩んでいる方へ、なるべくわかりやすく説明していきたいと思います。

 

ホルモン補充療法も正しく理解し、受療できれば女性の更年期以降のQOLは格段に上がると、私は思っています。

 

私自身、ホルモン補充療法を継続しており、いろいろな経験もしています。

 

ここでは、正しくホルモン補充療法について理解し選択のひとつにいれることができるよう、詳しくお伝えします。

 

 

 

 

1. ホルモン補充療法(HRT)とは?

更年期を迎え、不足になったエストロゲンを補充する治療法です。

 

似たような言葉に、乳癌の時に使われる「ホルモン療法」がありますが、ホルモン依存性の乳がんの増殖を促す女性ホルモン(エストロゲン)が働かないようにする治療法です。全く逆の作用になります。

時々勘違いしている方を見かけます。

 

ホルモン補充療法更年期障害の治療法のひとつです。

 

更年期障害とは

更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。

日本産婦人科学会より

 

更年期障害は、他の病気のような数値で表されるような客観的な診断基準がなく、更年期の女性がその症状で生活に支障をきたしているか、いないのかという主観的な基準のみです。

 

他の人が大丈夫でも、だれがなんと言ってもあなた自身が生活に支障をきたして辛いのであれば立派な更年期障害という病気です。

 

 

ホルモン補充療法の実際

ここでいうホルモンは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンのことです。

 

子宮を摘出している・・という方はエストロゲンのみ

 

子宮のある方はエストロゲンと黄体ホルモンが、補充されることになります

 

略して「HRT]といいます。

HRT

Hormone Replacement Therapy  の略になります。

Hormone とは、エストロゲン、プロゲステロンの女性ホルモンを指します。

Replacementは「補充」

Therapy  は「治療」

 

以降、ホルモン補充療法のことは、HRT(ホルモン補充療法)として書きますね。

 

年齢を重ねると卵巣の機能が停止し、エストロゲンとプロゲステロンが生成できなくなり、急激な減少に身体が適応できず起きてくるのが更年期症状

 

更年期症状が強く日常生活や仕事に影響がでてしまう状態を更年期障害といい、HRT治療の対象となります。

 

更年期障害は、女性ホルモン特にエストロゲンが欠乏して起きてくるので、「不足しているなら外部から補充しよう!」「急激な減少を和らげよう!」というのが、この治療です。

 

HRT(ホルモン補充療法)の補充する量

ホルモンを足すという意味では、ピルを思い浮かべる方もいると思いますが、ホルモン補充療法で補充する量は、ピルに比べると極少量です。

 

どのくらい少ないか・・というと・・

 

男性にもエストロゲンがあります。

 

30~50pg/mlという量でごく少量です。

 

ちょっと衝撃的ですが、女性の更年期にはエストロゲンの量が男性より少なくなります。

 

つまり、30~50pg/ml以下ということ。

 

婦人科を受診して検査の結果、「ゼロに近いと言われましたー」と嘆いている方が多いです。

 

HRT(ホルモン補充療法)は、ゼロ近くまで減ったエストロゲンを、この男性並みになるくらいに足すだけ・・・

 

ある講座でこの話をしたところ、「生きるのに最低必要量ということですね」と受講者が言っていました、その通りなんです、最低限の量なんです。

 

HRT(ホルモン補充療法)の主な治療薬と特徴

筋腫などで子宮を摘出している・・という方はエストロゲンのみ

 

子宮のある方はエストロゲンとプロゲステロンが、補充されることになります。

 

エストロゲンの薬には、飲み薬と貼り薬と塗り薬があります。


以下に薬の種類とそれぞれ使われる薬品名とメリット・デメリットをあげておきます。

 

薬品名 メリット デメリット・リスク
飲み薬 ・毎日の習慣化ができれば飲み忘れが少ない ・肝臓に負担をかける

・体内の薬の濃度に変動があり飲み忘れがあると効果が一時的にさがる

貼り薬 ・体内の薬の濃度が一定

・肝臓に負担をかけない

・皮膚のかぶれや痒みがある

・貼り換え忘れがある

塗り薬 ・皮膚のかぶれや痒みが少ない

・体内の薬の濃度が一定

・肝臓に負担をかけない

・毎日の習慣ができれば、塗り忘れはない

・塗布後、衣服に薬が付着し、有効な量にならないことがある

 

プロゲステロンは、主にデファストンが使われていましたが、2021年からエフメノという天然型のより乳がんのリスクが低い薬が使われるようになりました。

 

 

 

 

 

HRT(ホルモン補充療法)の主な投与法

 

子宮のある人は、エストロゲンの働きで子宮内膜が増殖しそのままだと子宮内膜ガンになるので、黄体ホルモン(=プロゲステロン)を使って、子宮内膜を排出します。

 

なので、生理様、或いはもっと少ない量ですが、出血があります。

 

このエストロゲンとプロゲステロンを組み合わせて治療するのですが、その方法がいくつかあります。

 

 

主に行われているのは2つあって、(1)周期的投与法の持続法と4)やエストロゲンとプロゲステロンを同時に持続的に行う持続的併用投与法です。

 

周期的投与法の持続法をプロゲステロンを飲むのを休むと出血しますが、いつ出血するか予測ができます

 

持続的併用投与法はいつ出血するかわからず、予測ができません。

 

これが大きな違いです。

 

 

*トピックスで書いたサーム(SERM)はプロゲステロンの代わりに使いますが出血しません。たがそれを知っていて使う先生はあまりいません。

 

今までHRT(ホルモン補充療法)を始めた方の話を聞くと、先生によって処方される薬や、投与する方法にその先生の好みが反映されると感じています。

 

たとえば、閉経前はHRT(ホルモン補充療法)はしないという先生

 

ジェルから始める先生

 

メノエイドコンビパッチから始める先生

 

周期法で始める先生など、いろいろな処方の仕方があります。

 

しかし、本来飲み薬、貼り薬、ジェル剤、どのような特徴がある薬を使うか、本来は先生が好みで選ぶのではなく、治療を受ける人が、自分に合わせて一緒に選ぶべきと思っています。

 

そのためには、更年期女性自身もきちんと治療について理解しておくことが必要ですね。

 

「効かなかった」「胸が痛くてやめた」「出血が嫌でやめた」という声をよく聞きますが、いろいろな薬や使い方があるので、あきらめないで医師に相談してほしいと思います。

 

HRTのメリットとデメリット:知っておくべきポイント

もともと体にあるホルモンを必要最低限レベルまでに補う治療です。

この治療で、症状が良くなり「元の自分に戻れた・・」「元気に働ける」という声も、私はたくさん聞いてきました。

ホルモン補充療法を受けるには、医師の診察・処方が必要です。

(ネットではホルモン補充療法の薬が売買されているのを見かけますが、危険ですので、医師からきちんと処方してもらってください、金額的にもこれが一番安いですから)

私が理想としているところは、更年期に入る前に、更年期に関する正しい情報を得ておき、更年期に入ってもし更年期障害になったらどのような治療法があって、何を選択するか考えておくことです。

そして、かかりつけの婦人科医を見つけて、一番良いタイミングで最良の治療を受けれるように準備しておくのが、いいですね。

更年期前の方が、ハイジアの講座を受けた感想には「今まで漠然と更年期が怖かったけど、講座を聞いて怖くなくなった」「更年期の過ごし方がわかって、自分の更年期がどうなのか楽しみになった」という声も聞きます。

 

トピックス

1.プロゲステロンの代わりに、骨粗鬆治療薬のサーム(SERM)を使用する医師もいます。SERMには子宮内膜保護作用があると言われています。TVにも良く出演している山王メディカルセンターで女性医療センター長太田博明先生に学会でお会いしお話したときも、ホルモン補充療法には、SERMを使うのが良いと言われていました。実際にSERMを処方している医師もいます。まだ、更年期障害の治療薬としては、スタンダードな薬ではありませんが、今後その有効性が証明されてくる可能性があります。

2.ミレーナは、合成黄体ホルモンであるレボノルゲストレルを子宮内に直接放出する子宮内避妊システムですが、これをHRTのプロゲステロンの代わりに使うということもあります。

この場合は、エストロゲンのみ使用すればよいので、患者にとっては楽になります。

しかし、現在ミレーナは避妊に使うもので、更年期障害の治療としては保険診療にはなっていません。子宮内に装着すると5年間作用するので、最初避妊目的で使用し、途中からHRTのプロゲステロンの代わりに使うのは可能なようですが、タイミングが難しいですね。

また、子宮内に挿入する時に、子宮口のゆるみがないと痛いので、経腟分娩の経験者が対象となります。

 

SERMやミレーナなど、今後更年期障害の治療の研究が進むなかで、スタンダードな治療薬になる可能性があります。

更年期障害の分野は、まだまだ未知なことも多い分野ですので、今後の動きに注目したいと思います。

 

 

ホルモン補充療法に関してハイジアでは個別にご相談をお受けすることもできます。

ハイジアの相談サービス

 

ハイジアでは、更年期に関する情報を定期的にメールでお届けしています

 

 

 

 

 

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ハイジア 佐藤みはる

女性の更年期と更年期以降の健康をサポート・ハイジア代表  助産師・ウィメンズヘルスアドバイザー・メノポーズカウンセラー・分子栄養学アドバイザー。 助産師として大学病院に33年間勤務する。 2013年に退職しハイジアを開業。

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