母が、娘のホルモン補充療法に反対するという現実
今、団塊ジュニアの世代の子どもたちが、更年期に入ってきています。
今まで相談を受けた方たちの中には、ホルモン補充療法を受けようとしたら、母親に反対された、乳がんになるから辞めなさいと言われたということがしばしばあります。
団塊ジュニア世代の女性たちが、更年期だったころにあったのが次のような2002年のセンセーショナルなWHIの報告の報道でした。
日本では各メディアがこぞって取り上げたので、このような記事を多くの人が目にしていました。
当然、ホルモン補充療法を受けていた人も治療をやめることになりました。
更年期専門の医師の講演会で、「このことで団塊ジュニアの女性たちが、ホルモン補充療法の恩恵を受けられなかったことの影響は大きい」と話されていたことがありました。
というのは、ホルモン補充療法を受けることによって更年期症状が改善するだけでなく、メタボリック症候群や骨粗鬆症などを予防することができたのに、その恩恵を受けることができなかったことになるからです。
しかし、それだけではなく、その影響が次の世代の女性たちにも及んでいるのです。
この報告以降、多くの医師が調査をし現在では「ホルモン補充療法で乳がんになる確率はほんの少しが上がるがそのリスクは、肥満や喫煙者が乳がんになる確率と同等か低いことがわかっている」という見解で統一しています。
繰り返される質問
ところが一度インプットされた「乳がん危険」の情報は今も根強く残っています。
未だに、セミナーをしていると「ホルモン補充療法は乳がんになるのですよね?」という質問があります。
先日、更年期を特集したテレビ番組を見ていたら、やはり「ホルモン補充療法は乳がんになるのですよね?」とアナウンサーが聞いて、ドクターが答えるいう場面がありました。
TVでも雑誌などでも必ず出てくるフレーズです。
都度、ゲストのドクターたちが丁寧に答えてくれるというパターンが何度となく繰り返されています。
いつになったら、このやりとりはなくなるのだろう?
先日も、母にホルモン補充療法を受けるのに反対されました、と聞きました。
順調に、母から娘へ情報が引き継がれているようです。
おそらく、団塊ジュニアの世代の女性たちは、すでに更年期を卒業していますから、新しい情報を受ける必要はなく「ホルモン補充療法をすると乳癌になる」のまま情報が塗り替えられていないという可能性があります。
なので、娘からホルモン補充療法を受けると聞くと、娘を心配して反対するのだろうと思われます。
母親からみれば、そんな危険な治療は受けてほしくないと思うのも頷けます。
娘も母親に心配かけたくないと、治療に踏み切れないでしょう。
更年期に関するセミナーの対象者は、これから更年期を迎える女性やすでに更年期を迎えている女性へ行うことが多いのですが、すでに更年期を卒業した年代にも必要なのではないかしらと思い始めました。
母親世代にも新しい情報を、安心できる情報を届けないと、いつまでたってもせっかく治療を受けようとした娘が、母親に邪魔されてしまうという状況から抜け出せないですよ・・
そして、「我慢しなさい」と言われてしまうのは辛すぎます。